2025年08月25日
家族と一年商店ー暮らしに寄り添う「無理のないエシカル」
山と湖に囲まれたこの小さな藤野という町で、ひっそりと、しかしながら確かな存在感を放つ店があります。
そのお店の名は 「家族と一年商店」
このインタビューでは、私たちにとっては耳慣れないエシカルという言葉がたくさん出てきます。。
読んでいただき、少しでもわかっていただけますと幸いです。
家族と一年商店さん、日々の暮らしの中で無理なく環境や人権、
動物福祉に配慮できる“選び方”そして“生き方”を提案しています。
今回は、お店を営む中村さんに震災や子育てを通して育まれた価値観、
そしてお店に込めた思いを伺いました。
―まずは中村さんの自己紹介からお願いします。
もともとはドイツ生まれで、その後は立川の米軍ハウスに住んでいました。
11歳のとき、絵描きの父が「藤野はいいよ~」と友人に勧められて、アトリエを建てるために家族で藤野に移住したのが30年前くらい。でも当時の私はちょうど思春期に入るころで、都会への憧れも強く、田舎暮らしに正直抵抗がありました。
なので、中学からは私立に通い18歳で藤野を離れたので、藤野にはあまり地元という感覚はないかもしれません。
―藤野を離れていた期間が長かったんですね。若い時は都会って魅力がありますよね。それがどうして戻ることに?
子どもが小学校に上がるタイミングで「東京の暮らし、このままでいいのかな」と思うようになりました。大きなきっかけは藤野にあるシュタイナー学園への入学。教育面での魅力もありますが、それ以上に、この町の人の多様さや、受け入れる空気の広さに惹かれました。
―外から見ても、確かにここ藤野は他の町とちょっと変わってますよね。実際に戻ってきて、価値観が大きく変わった瞬間はありましたか?
長女が生まれた年に東日本大震災があり、原発事故も経験しました。
それまで環境やエネルギーの問題はどこか他人事でしたが、一気に現実になったんです。
子ども時代はドラえもんの世界のような「未来は便利で発展していく」と信じていましたが、
そのときから「今あるものを守る」ことの重要性を強く感じるようになりました。
東京ではエコやエシカルを意識しても、結局は“買う”ことでしか選択できない。
でも藤野では、もらう・分け合うが日常にあります。
そういう循環が「エシカルな暮らし」の本質に近いと思います。
モノを買うだけでは一方通行ですが、つくる・シェアする・循環させることで、
人も自然も豊かになるんです。
―「本当の豊かさって何なんだろう」ということなんですね。そして開店を目指すわけですね。ご自身のお店「家族と一年商店」の店舗をすぐにつくられたんですか?
いえいえ、最初は文章やSNSで、家族との暮らしやエシカルな選択について発信していました。コロナ禍になって、同じ方向を向く人とつながりたいと思い、2021年にオンラインショップをスタート。
私は「エシカル=真面目で難しい」って思われがちなところを変えたくて。
扱うのは環境や人権、動物福祉に配慮しつつ、暮らしにワクワクを与えるもの。
たとえば、手作りのラタンバスケットやフェアトレードのチョコレート。
ちょっと高くても、長く使えて背景が見えるものを選びたい。エシカルは義務じゃなく、
「選ぶのが楽しい」と感じられることがとても大事なんです。
~聞いている私たちにも「ウキウキ・ワクワク感」が伝わってきます。それが同じ方向を見ている方と徐々につながっていくんですね。~
―たくさんの候補地があったと思うんですが、店舗がこの場所になった理由はどうしてなんですか?
2025年です。藤野のgood night suitの神鳥さんから「うちの店の向かいでやってみない?」と声をかけてもらいました。実際に商品を手に取ってもらいながら、背景やつくり手の話を直接できるのは、エシカルを伝える上でも大きいです。遠方からわざわざ来てくださる方もいて、本当にうれしいですね。
―目の前のgood night suitさんからですか…これも“つながり”からなんですね。話は変わりますが、エシカルな暮らしをずっと続けるって大変じゃないですか?
完璧を目指さないことです。
私はVoicyで「エシカル暮らしA面B面」を配信していますが、A面は理想、B面は現実の悩みや失敗。
たとえば「プラスチックを減らそう」と思っても、完全には避けられません。
でも「できる範囲でやる」「そのことを共有する」ことで、周りもハードルを下げて参加できると思います。エシカルって、ダイエットに似ているんです。やりすぎれば続かないし、無理なく取り入れれば習慣になる。暮らしを変えることは小さな選択の積み重ね。
その積み重ねが、未来の環境や社会を少しずつ変えていくと思っています。
―この町にUターンで戻ってこられ、都会と比べてあらためて藤野で暮らす良さって感じることはありますか?
「助け合いが自然にある」ことです。
東京ではご近所付き合いが負担に感じることもありましたが、藤野ではそれが安心感に変わります。
エシカルな暮らしって、特別な活動ではなく、こうした日々の人との関わりの中に息づいているものだと思います。
―最後に、これからの一年商店について教えてください。
物を売る場所ではなく、価値観を分かち合う場所にしたいです。
エシカルな暮らしは、完璧じゃなくてもいい。まずは「これならできそう」という小さな一歩から。
そんなきっかけを提供できるお店であり続けたいですね。
〜そんなに大きくないお店、そんなに大きくない店主、けれどその発信力はたいしたものです。
皆さんも、JR藤野駅から徒歩1~2分の「家族と一年商店」へ是非遊びにいらっしゃってください。
店主の思いがこもったそこに飾ってあるモノの一つ一つを眺めそして手に取ることで、
きっと、いつもの暮らしとちょっと違った“暮らしの風景”が頭の中で描けるような気がします。〜